1.高島市を取り巻く社会経済状況の変化

(1)東日本大震災等を契機とした国民全体の価値観の変化

 
2011年、東日本大震災が起こり、日常生活における安心・安全や資源・エネルギー確保のあり方、社会とのつながり等について、多くの国民の意識の変化をもたらした。特に、「安全・安心」、「社会との結びつき」については国民の7割以上が震災前よりも必要、あるいは大切と感じるようになったとしており、国民全体の価値観が変化している。
また、東日本大震災以前より続くデフレーションは、雇用環境の悪化や、企業による投資減少、自治体等の税収減少・財政悪化、貧富の差の拡大等の社会問題を長期化させている。こうした社会経済環境を背景に、物や経済的な豊かさから心の豊かさを重視する価値観へのシフトも見られるようになっている。
(東日本大震災を契機とした国民の価値観の変化 ~社会資本に求める機能~)



注)社会資本・・・道路・港湾・上下水道・公園・公営住宅・病院・学校など、産業や生活の基盤となる公共施設
 

 
出典:国土交通白書 国民意識調査(平成24年1月末~2月に実施 国土交通省)
(東日本大震災を契機とした国民の価値観の変化 ~震災前と比べた社会における結びつきの意識変化~)
 
出典:社会意識に関する世論調査(平成23年度 内閣府大臣官房政府広報室)
 

(2)全国的な人口減少・高齢化に伴うニーズの変化

 

 
日本全体での人口減少・高齢化に伴い、消費や公的サービスへのニーズについても、変化している。
例えば、現状では、国民医療費の半分以上(約55%)が65歳以上の高齢者、その総額は約20兆7000億円となっており、今後ますます少子化により医療費を支える人口が減っていく一方、高齢者の医療費は増加する。公的サービスについては、社会保障のあり方等について懸念が高まっているのが現状である。
 一方、今後、高齢化が一段と進んだ場合には、健康・介護・医療サービス等の高齢者向けビジネス、特に医療・保健衛生サービスの大きな拡大が見込まれる。また、健康食品をはじめとした食料品関連産業、ホームヘルパーやデイケアサービスなどの在宅介護サービス、娯楽、旅行・外食産業においても、高齢者の増加に伴う新たな需要の増加が予測される。
また、高齢者の就業者数は平成24年度現在で595万人と過去最多となる等、高齢者の就労も今後ますます増えることが予測され、高齢者が人材として参入することにより、成長する産業も今後は期待される。
 
 
 

(3)再生可能エネルギーをはじめとした自然との共生を目指した産業振興

 

 
環境問題が社会全体の問題として認識されてから、自然や環境に配慮した消費行動やライフスタイルは年々関心が高まっている。健康と環境を志向するライフスタイルを指す「LOHAS(ロハス)」や、化学合成肥料等を使用せず、自然への影響を最小限にしながら行う農法を指す「オーガニック」等の言葉についても広く国民に普及・浸透している。
 
特に近年では、自然との共生を目指した「ロハスビジネス」等への関心が年々高まっており、2005年に行われたLOHAS消費者動向調査によると、日本の成人の29%が健康と環境を志向する「LOHAS層」と言われるライフスタイルを持つ層と言われている。
 こうした「LOHAS層」をはじめとした関心層は、今後自然との共生を目指した新たな産業を牽引する消費者層として注目されている。
 また、東日本大震災を契機に、再生可能エネルギーに対する関心と需要は急速に広がっている。2012年からは、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)によって発電された電気を、国が定める一定期間・一定の価格で、電気事業者が調達することを義務付ける、固定価格買取制度が施行された。この制度開始を受けて、再生可能エネルギーの導入は進んでおり、2014年2月末までに、638.1万kWの設備が運転を開始している。化石燃料や原子力の代替エネルギーとしてはまだその導入量は少ないが、近年急速に技術革新等も進んでおり、今後一層再生可能エネルギーの導入拡大は進むものと期待される。
 

 

 
(日本の成人に占めるLOHASライフスタイルを志向する消費者層)
  出典:LOHAS消費者動向調査(2005年 株式会社イースクエア)
 
   

(4)社会資本整備を取り巻く厳しい社会経済環境

 

 
1970~80年代に整備されたトンネルや高速道路、橋梁等の社会資本(インフラ)は、現在築造されてから30~40年経過しており、今後大量にメンテナンスが必要になることが推測される。
  現在ある社会資本を単純に更新するだけでも、年間8.1兆円の投資を50年間続けなければならないとの試算(出典:「朽ちるインフラ」 根本祐二)もあり、今後進む人口減少・少子高齢化を背景に、老朽化した社会資本の全てを維持管理していくことは、財政的に困難になるものと考えられる。
  また、2012年の笹子トンネル天井板落下事故を機に、社会資本の老朽化に伴う問題については、安全面からも国民の関心は高まっている。
  このような中、社会資本に関しては、整備から維持管理も含めたマネジメントへと考え方をシフトしていくことが求められている。